第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。
第1回の受賞作『玻璃の家』、同優秀作『少女たちの羅針盤』に続いて、同賞の関連作を読むのは3作目になるが、島田荘司のカラーを強く感じるのは『玻璃の家』だけ。あとはよく選んだな、というほど彼のイメージとは異なる。
自殺支援サイトを題材にとり、ちょろっとハードボイルドテイストを垂らした本作も、鮎川賞選考委員時代の島田だったら選ばなかったろう作風で、これも本格の書き手を捜すより賞の定着をひとまず優先したいという主催者の意思のあらわれと見てとれなくもない。
選評や多くのレビューで指摘されているように、本作品のキモはエピローグにある。これをどう見るかによって評価も多少変わってきそうだが、ぼくはあまりしっくり来なかった。
それまで主人公視点で語られてきたものが、エピローグではいきなり別人の視点に移る。主人公=探偵役の推理の穴や語られなかった(意図的に伏せていたもの含む)ストーリーを補完するには、たしかに有効な手なのだが、ここは敢えて視点を変えずに最後までいってほしかった。
それから、本作をハードボイルド系統の作品と見た場合、キャラの弱さとサスペンスの不足はマイナス点になると思う。
読了:2011/6/20
採点:☆☆☆
▼関連作
※第1回受賞作
※第2回受賞作
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