再会/横関大

第56回江戸川乱歩賞受賞作。

再会
再会横関 大

おすすめ平均
starsいたって普通。よくある2時間サスペンス。
stars達成感の高い推理小説です
starsなかなかやります。
stars書き続けた長編小説は実を結ぶ!―静かなドラマを予感させる表題
stars評価は、巻末の選考委員のコメントが非常に参考になります。

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ミステリに限らず、公募新人賞としては最も権威がある乱歩賞。過去に多くのベストセラー作家を生み出し、セールス面でも好成績を収めてきた。
ところがその一方で、コアなミステリファンには顧みられることがないのも、この賞の一大特徴といっていいだろう。

そもそも乱歩賞受賞作を購入する場合、"それが乱歩賞だから"手に取っているというケースが大多数ではないか。直観や評判は二の次で。
作品自体にではなく、受賞作という看板に訴求力があるというのは、新人賞のあり方としてはあるいは間違ってないのかもしれないが、新しい才能の発掘より看板を守ることのほうに重きが置かれるようになっては本末転倒。事実そうした傾向になっていることに、現場も危機感を持ち始めたようだ。
去年の「このミス」の座談会に、日本推理作家協会の新理事長に就任した東野圭吾が、乱歩賞改革に乗り出したみたいなことが書いてあった。
そのことは、本作の帯に引用されている「「乱歩賞の傾向と対策」のようなものから解放された」という東野の選評(抜粋)からも窺える。

平均点作品、業界ネタが有利というレッテルが長く張られ続けていた乱歩賞が本当に変われるのか。その問いに答えるには作品をもってするしかない。
『再会』(受賞時タイトル『再会のタイムカプセル』)は、たしかに従来の乱歩賞とは毛色が異なる。というと、これまで見られなかった作家の個性が発揮されているように思われがちだが、正しくいうなら作者の色(個性)のあまり感じられない作品だった。
極論するなら、誰が書いてもいい内容というか…。
トリックの弱さを指摘する声があるが、プロットで読ませる作風なので致命傷とはいえない。それよりも、新人賞なんだからこの人ならではの味付けが欲しいところだ。単に"従前の乱歩賞と違う"だけでは、読者としては物足りない。
本作が受賞後第1作であれば許容範囲なのかもしれないが、長く乱歩賞を覆っていた閉塞感を打ち破れるほどのパワーは感じられなかった。
東野圭吾の立場からは、数年かけて合わせ技でなんとか――という気持ちなのだろうが、流れを変えるには、ひとりの突然変異(芭蕉!?)の登場に期待するしかないと思う。
『再会』が悪い作品とはいわないが、これなら『脳男』の受賞の方がよほど衝撃的だった。「乱歩賞は変わるかな?」と思えた。

ところで、
帯に選評からの抜粋が載っているけど、これは実際に選評の中で語られたものとは異なったニュアンスで受け止められる可能性が高いので、ちょっと警戒が必要かもしれない。
たとえば上記の東野圭吾の言葉だが、この部分だけ読むと、「本作を受賞作に得たことによって、乱歩賞が従来のイメージから解放された」というふうに取れる。でも、解放された主体はここでは作者(横関大)なのね。「傾向と対策のようなものから解放されたのが勝因」というのが、実際の東野の言。

読了:2010/10/1
採点:☆☆☆★


▼関連作
脳男 (講談社文庫)
脳男 (講談社文庫)首藤 瓜於

おすすめ平均
stars娯楽として十分楽しめます。
stars続編ありの前提で
stars伏線の回収不足
stars新しいヒーロー(またはヒール)
starsサスペンス性よりも、その病気について興味が沸いた。

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※第46回江戸川乱歩賞受賞作


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[ 2010/10/05 08:27 ] | TB(0) | CM(0)
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